九州の真ん中にある熊本県。雄大な阿蘇の山々と、豊かな湧き水に恵まれ、トマトやすいかの収穫量は全国1位(農林水産省の資料、2024年)です。城下町・熊本には、藩の時代から伝わる料理が残ります。
2026年7月28日には「令和8年熊本地震」(最大震度7)が起き、熊本城などに被害が出ました。この記事は2026年10月時点の情報です。出かける前に、最新の状況を確認してください。
熊本県の名産
馬刺し
甘めのしょうゆに、にんにくや生姜を添えて。ハレの日のごちそう
熊本では、馬肉を生で味わう馬刺しが、お祝いの席などで出されるハレの日のごちそうです。加藤清正が、朝鮮出兵のときに馬肉を食べたのが始まりといわれます。
熊本は馬肉の生産が盛んな土地で、農林水産省の「うちの郷土料理」の熊本県の紹介でも、ハレの日のごちそうとして取り上げられています。
食べ方は、甘めのしょうゆに、おろしにんにくや生姜を添えるのが熊本流。玉ねぎのスライスや大葉と一緒に食べると、さっぱりと味わえます。
馬肉には、生で食べると食中毒を起こす寄生虫がいることがあり、決められた冷凍処理をすると心配がなくなります。熊本県は、冷凍処理済みの商品を選ぶよう呼びかけています。取り寄せたものは冷凍で届くことが多いので、表示の方法で解凍し、早めに食べましょう。小さな子どもやお年寄り、体調のすぐれない人は生食を控えましょう。
からし蓮根
れんこんの穴にからし味噌を詰めて揚げる、細川藩ゆかりの味
からし蓮根は、ゆでたれんこんの穴に、からし味噌を詰め、黄色い衣をつけて丸ごと揚げた料理。熊本の郷土料理として、農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」でも紹介されています。
1632年、体の弱かった藩主・細川忠利のために、お寺の和尚が考えたのが始まりといわれます。切り口が細川家の家紋「九曜」に似ていることから、藩の外には出さない料理とされ、明治になって庶民にも広まりました。
衣は、うこんなどで黄色く色づけされています。輪切りにすると、黄色い衣と、からし味噌の詰まった穴の模様が目にも鮮やか。正月や行事の料理にも使われます。
ツンとくる辛さがくせになる味で、おつまみにもぴったり。取り寄せたら表示に従って保存し、食べる分だけ切り分けましょう。
いきなり団子
さつまいもとあんを生地で包んで蒸す、素朴な郷土のおやつ
いきなり団子は、輪切りのさつまいもとあんを、小麦粉やもち粉の生地で包んで蒸した、熊本の郷土のおやつ。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」でも紹介されています。
名前の由来は、熊本弁の「いきなり」(簡単に、すぐに)からといわれ、さっと作れることから名付けられたという説があります。「いきなりだご」とも呼ばれます。
昔は、小麦粉だけ、いもだけで作る簡単なものでしたが、今はあんを入れるのが定番です。ほくほくのさつまいもと、もっちりした生地、やさしい甘さのあんが重なります。
おみやげ用は冷凍のものが多く、電子レンジや蒸し器で温めると、蒸したてのようなやわらかさに戻ります。温め方は商品の表示を確認しましょう。
熊本県の名所
熊本城
加藤清正が築いた名城。地震からの復旧の歩みも見られる
熊本城は、加藤清正が築いた城で、国の特別史跡。13棟の建物が国の重要文化財に指定されています。今の天守閣は、1960年に再建されたものです。
2016年の熊本地震で、石垣や建物が大きな被害を受けました。天守閣は2021年に復旧が終わり、内部の見学も再開。城全体の復旧は、2052年度の完了を目標に進められています。
2026年7月28日の地震(令和8年熊本地震)では、石垣の崩落や変形などが約40か所で確認されるなど、再び被害が出ました(熊本市の発表)。熊本城は8月13日に開園を再開し、天守閣や特別見学通路など、地震の前に公開していた範囲を見学できます。
地上約6mの特別見学通路からは、復旧の様子を間近に見られます。見学の目安は1〜2時間。余震や工事の状況で公開範囲が変わることがあるので、出かける前に公式サイトで確認しましょう。
阿蘇
世界最大級のカルデラと、草千里ヶ浜の広い草原
阿蘇は、南北約25km、東西約18kmの世界最大級のカルデラをもつ火山。1934年に国立公園に指定され、2014年にはユネスコ世界ジオパークに認定されました。
カルデラの中には町や田畑が広がり、草原は、野焼きや放牧によって千年以上守られてきたといわれます。烏帽子岳のふもとの草千里ヶ浜は、火口の跡に広がる大草原。雄大なカルデラの景色を楽しめます。
中岳は今も活動している火山です。2026年10月9日の気象庁の発表では、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)が続いていて、中岳第一火口からおおむね1kmの範囲は立ち入りが規制されています。火山ガスの量によっても見学が制限されます。
ぜんそくや心臓などに持病のある人は、火口の見学ができません。7月の地震のあと、道路や鉄道、バスの状況が変わっていることがあるので、出かける前に気象庁の火山情報と、交通機関の運行状況を確認しましょう。
黒川温泉
山あいの川沿いの湯の里。入湯手形で露天風呂めぐり
黒川温泉は、阿蘇の北、南小国町の田の原川沿いにある温泉地。木々に囲まれた小さな温泉街に、落ち着いた雰囲気の旅館が並びます。
名物は、1986年に始まった「入湯手形」。小国杉で作った手形を買うと、組合に加盟する宿の露天風呂から3か所に入れます。「黒川温泉」は、2007年に地域団体商標にも登録されました。
泉質は、ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉や単純温泉など、宿によってさまざま。浴衣で湯めぐりをしながら、川のせせらぎを聞いて歩くのが楽しみです。冬には、竹の灯り「湯あかり」が温泉街を照らします。
2026年7月の地震のあと、黒川温泉の旅館組合は、大きな被害はなく7月29日から通常どおり営業していると案内しています。宿ごとに状況が違うこともあるので、予約の前に確認しましょう。
熊本城へは熊本駅から市電で、阿蘇と黒川温泉へは、熊本や福岡からバスで向かえます。地震のあとは交通や見学範囲が変わることがあるので、出かける前の確認を忘れずに。家で熊本を味わうなら、馬刺しとからし蓮根をおつまみに、いきなり団子をおやつにするのがおすすめです。
火の国の大地と、城下町に伝わる味。熊本は、復興の歩みとともに訪れて応援したくなる土地です。