日本海に突き出た能登半島と、加賀百万石の城下町・金沢をもつ石川県。加賀藩の時代から続く食文化や工芸が、今も暮らしの中に息づいています。
冬の主役・ズワイガニから、日本三名園の兼六園まで。石川を代表する名産と名所を3つずつ紹介します。
石川県の名産
ズワイガニ
雄は加能ガニ、雌は香箱ガニ。冬の解禁を待つ石川の味覚
石川県でとれるズワイガニは、雄を「加能ガニ」、雌を「香箱ガニ」と呼びます。加能ガニは、2006年に県内の漁協がひとつになったのをきっかけに決められた、県全体の呼び名です。
漁は例年11月上旬に解禁され、底びき網で水揚げされます。加能ガニには、品質の証として青いタグが付けられます。
加能ガニは、しっとりと甘い身と濃厚なかにみそが魅力。小ぶりな香箱ガニは、甲羅の中の濃厚な「内子」と、おなかに抱えたプチプチの「外子」が楽しめます。資源を守るため、香箱ガニの漁期は短く設定されています。
お取り寄せのゆでガニは、冷凍の場合、冷蔵庫でゆっくり解凍するのが基本です。解凍方法は商品ごとに違うので、同封の説明に従いましょう。
治部煮
粉をまぶした鴨や鶏とすだれ麩を、とろみのある汁で煮た金沢の料理
治部煮は、加賀藩の時代から受け継がれてきた、金沢を代表する郷土料理。小麦粉などをまぶした鴨肉や鶏肉を、すだれ麩や野菜と一緒に、甘辛い汁で煮て作ります。
肉にまぶした粉が汁にとろみをつけ、うまみを閉じ込めます。仕上げにわさびを添えるのが、治部煮ならではの食べ方です。
名前の由来には、「じぶじぶ」と煮る音から来たという説など、いくつもの説があります。もとは鴨などの野鳥を使う冬の料理で、口が広く底の浅い専用の漆器「じぶ椀」で味わいます。
家で作るなら、鶏肉に薄く小麦粉をまぶしてから煮るのがポイント。すだれ麩が手に入れば、金沢らしい見た目に仕上がります。
かぶら寿し
塩漬けのかぶにブリを挟み、麹で漬けた冬の発酵ずし
かぶら寿しは、塩漬けにしたかぶに切り込みを入れてブリを挟み、米麹で漬け込んだ発酵ずし。加賀藩の時代から伝わる、石川を代表する冬の味です。
かぶとブリを、米麹やにんじん、しょうが、ゆずなどと一緒に桶に重ね、重石をのせて2週間ほど熟成させて作ります。
発祥には、藩主の湯治の際に出された料理だったという説や、武士しか食べられなかったブリを、農民がかぶに隠して食べたのが始まりという説などがあります。
冬の味覚で、正月料理に欠かせない一品とされます。かぶのシャキッとした歯ごたえに、麹の甘みとブリのうまみが重なります。お取り寄せは冬の時期に限られることが多いので、早めの予約がおすすめです。
石川県の名所
兼六園
加賀藩が造り上げた日本三名園のひとつ。冬は雪吊りが風物詩
兼六園は、加賀藩の歴代藩主が長い年月をかけて造り上げた庭園。水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ「日本三名園」のひとつで、国の特別名勝に指定されています。
名前は、庭園に求められる6つのすぐれた景観「宏大・幽邃(ゆうすい)・人力・蒼古・水泉・眺望」を兼ね備えることから。1822年に名付けられ、1874年には市民に全面的に開放されました。
冬の風物詩は、雪の重みから松の枝を守る「雪吊り」。毎年11月1日に作業が始まり、縄が円すい形に張られた姿は、金沢の冬を象徴する景色です。
開園時間は季節によって変わり、朝早くに無料で入れる早朝開園もあります。園路は玉砂利で滑りやすいところがあるので、歩きやすい靴で出かけましょう。
ひがし茶屋街
江戸時代に公許された茶屋街。木虫籠の格子が続く町並み
ひがし茶屋街は、1820年に加賀藩から許しを得て開かれた茶屋街。今も当時の茶屋建築が並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれています。
通りに面した家々の、細かい出格子は「木虫籠(きむすこ)」と呼ばれ、町並みに落ち着いた表情を与えています。茶屋建築のひとつ「志摩」は、国の重要文化財に指定されています。
通り沿いには、金箔を使った工芸品の店や和菓子の店、カフェなどが並び、町歩きが楽しめます。
日中は観光客で混み合うので、ゆっくり写真を撮るなら朝の時間帯がおすすめです。暮らしている人もいる町なので、静かに散策しましょう。
那谷寺
白山を開いた泰澄が開いたと伝わる古刹。奇岩と紅葉が見事
那谷寺は、小松市にある古い寺。717年に、白山を開いた僧・泰澄が、岩屋に千手観音をまつったのが始まりとされます。寺の名は、花山法皇が名付けたと伝わります。
境内には、長い年月をかけて削られた白い岩山がそびえ、独特の景色をつくっています。この奇岩を含む境内は、「おくのほそ道の風景地」として国の名勝に指定されています。
松尾芭蕉もこの地を訪れ、「石山の石より白し秋の風」の句を残しました。本堂(大悲閣)と三重塔は、国の重要文化財です。
秋は紅葉の名所として知られ、多くの人でにぎわいます。境内は石段や坂道が多いので、歩きやすい靴で出かけましょう。
兼六園とひがし茶屋街は、金沢の中心部で歩いて回れる距離。那谷寺へは、北陸新幹線の加賀温泉駅から向かえます。家で石川を味わうなら、冬にカニとかぶら寿しを取り寄せて、加賀の冬の食卓を楽しむのもおすすめです。
藩政時代から受け継がれる美食と、静かな庭園や茶屋街。石川は、季節を変えて何度でも訪ねたくなる土地です。